深夜のあらいぐま

月日というのは人の嗜好を変えるもので、あれほど嫌いだった洗濯が好きになった。今では毎日あらいぐまのように暇さえあればじゃぶじゃぶと洗濯している。洗濯物を干すのもだいぶうまくなった。10連くらいに連なったハンガーは、奥から順に干していけば、干し終わった洗濯物が顔にぶつかってきいってならずに済むのね!なるほどー(ばか)。急に洗濯が好きになった理由は定かではないのだけど、洗濯が好きというよりは、洗濯物が好きになったらしく、自分で洗濯できないものは大量にクリーニング屋に持ち込むようになった。別に今まで不衛生ではなかったと思うけど、なんだろう、この洗いたての洋服に対する執念は。でもさ、これやると、すぐに洋服傷んじゃうんだよね。

夜遊びの習慣というのは一度つくと止まらなくなる。今週は毎晩派手なイベントがあり、帰宅は2時近い。昨日は目黒にあるライブハウスへサックスを聴きにいった。いいねー、ライブ。やっぱり音楽は生が良い。サックスプレイヤーはイケメンで見てるだけで満足。そういうファンも多いのか、ジャズサックスってそんなに広い層に受けるのか?っていうような結構なおばちゃんが多かったよ(失敬)。そんな私もそろそろ人のことは言えない。確実に「おばさん」と言われる年に近づいているし、だけど私は別におばさんと言われることに対してそう気負いはない。心はいつまでたっても汚れなきガールであることに対しては疑いないし、一方肉体が衰えていくことは目の背けようがない。まあ滑稽でなければいいな、と思っている。ところで最近の若者はワインを飲まないそうです。お台場でイベントをやったバーテンの友達が、3日間でワインが一杯も売れなかったって。売れるのはビールとかフィズとか軽いのばかり。
先週うちでBBQパーティーを催したときなんか、6人でワイン8本とビール20缶くらい空いたけど、そのワインの飲みっぷりからいっても我々はもう若者ではないということか。だけど、これでもかなり少なくなったねってみんなで話たのだけどな。我々が若者であったころならば、おそらくワイン12本くらい空いていただろう。恋の始まりにも真っ最中にも終わりにも、いつも大量のアルコールがあり、深夜の濡れた匂いがあり、朝靄のざらついた空気があった。酔いは、不明瞭だった私の感覚を敏感にしたし、本音も嘘も笑いも絶望も、その中にしかなかった。
今みたいに飲酒運転にきりきりしていない時代、我々はバーでバラライカを飲んだあと、第三京浜で横浜に行ってさらに朝まで飲んだ。昼過ぎまでどこかのホテルか車の中で眠って夕方ようやく東京に戻るような週末。それはどこか他の国を旅するのと同じくらい不思議だし疲れたし刺激的だった。
そんなことを考えながら、今はもう少しおとなしく、それでもほぼ同じような思いで飲む。気がつくとそういう連中がその世界にはたくさんいて、もういちど私が戻れば再びあんな白昼夢のような生活をするのも夢ではない。悪くない。あまりに健康的なのはむしろ不健康な気分。あと一歩のところでぎりぎりで、毎晩尽きるまで、だけど終わることのないループを辿るように、もう一度。