眠れる森の子鹿

Chartreuse2006-04-08

吉兆のお花見弁当をゲット!
すばらしいですねー。手の込んだお弁当。桜の葉に包まれた鯛のお寿司や蛤の殻に盛られたそらまめのゼリー寄せや木の芽和え、レモンの皮の器に入ったいくらや鯛子にこごり、和牛みそ漬け金紙包み、兵庫鱧板蒲鉾とか、ふきよせ寿司など、盛りだくさん。本当に和のお弁当というのは風流です。


昨日は久々に若い男の子と飲んだ。とはいえ同い年なんだけど、最近仕事でもプライベートでもおじさんだらけなので、久しぶりに若い男の子と飲むのは気分がはしゃぐ。彼とはもうかれこれ4年のつきあいになる。確か前回会ったのは2004年の9月11日。9.11の日だった。昨日はおよそ1年半ぶりに会ったけど、特にそういうブランクも感じず本や映画やお互いの恋の話など楽しくしてあっさり別れた。軽く飲んだ後ドナテロウでアイスクリームだなんて、27歳の私にとってはここのところなかった展開で、彼は未だに大学生の前半くらいを生きている感じ。その変わらない彼がたまらなく好きで、私は、ここに男友達ありと思う。その理由を考えてみたのだが、結局は、男女が友達でいられるのは、お互いに「寝たい」と思わないことが最重要なんだと思う。おそらく彼と私は今までの4 年間のつきあいにおいて、お互いに全く一度も片鱗たりとも「寝たい」という感情を抱いていないと思う。これはたぶん私の夢想ではなくて、おそらく本当にそうだろうと思う。それは、お互いに興味がないんじゃなくて、人間的には興味があるけど「寝たい」という興味がないんであって、こういう人間に出会えるのは希だ。たいていは、一回しかあわなくても勢いで寝ちゃったり、毎日会う関係なら特に感情はなくてもなんとなく寝ちゃったりして友情を失ってしまう。本当に貴重な関係だ。だから私は今後も大切にしようと思う。

先週は日本庭園の美しい都内の高級ホテルのプレスパーティーへ。ワイドパンツにピンヒールで気取ってタクシーから降りんとしたまさにその瞬間、パンツの裾にピンヒールのかかとが引っかかってタクシーから落下。膝をアスファルトに打ち付けてそれは、それはそれは、目の前が真っ暗になるくらいいたかった。その惨事にあわてたベルボーイやドアボーイがまるでFF12で敵が次々とよってくるのを知らせる赤い印のように続々と駆けつけてきて「おけがはありませんか?」というのだけど、とにかく恥ずかしいので「大丈夫です!」と振り切ってパーティー会場でほほえみを浮かべながらシャンパングラスを持ってたっていたのだけど、そのうち膝のあたりにパンツがぺたぺたくっつくようになってきて、これはやばいなあとちょっとパンツをめくってみたら案の定血まみれだった。近くのボーイさんに声をかけてマキロンとバンドエイドをもらって応急処置。
それにしても、こういうホテルに行くたびに、変な世界だと、思う。サービスがいいのはもちろんすばらしいことだけど、だけど、なんて浅ましいこと、と思う。人間が、同じ人間に至れり尽くせりのサービスを要求するのが、当たり前の世界なんて。もちろん私も高級ホテルは好きだけど、別にホテルなんて泊まれりゃそれでいーじゃんと思ったりする。なんで、そこまでしてホテルの従業員はお客様の要望に応えなくてはならないのだろう。お客様が気づかないことまで察してサービスをしなくてはならないのだろう。招かれたプレス側にも、そういうホテルのサービスが大好きで徹底的にチェックしている女がいるのだけど、従業員の態度や設備や食事内容などを細かく細かくチェックして、どこが一番とか決めるらしい。それはある種の人にとっては大切な情報かもしれないけど、それに何か大切な意味があるとは思えない。もちろん情報の性質の差であって否定する訳じゃないけれど、それは私の主義じゃない。何か、情報を伝えるのは本当に難しい仕事ですこと。
翌日になっても血は止まらないし、仕事中手が空いたおりには恋人にメールで「出血多量で死ぬ」とか訴え続ける。その後マツキヨでキズドライを買ってシューってしたあと、先に述べた男友達と飲んで帰宅する。なぜか男友達と飲んだことは恋人に言えず、仕事ということにしている。余計な心配はさせたくないが故。帰宅は12時すぎていたのだけど恋人は起きている。机の上にはドラッグストアの紙袋。中には包帯とキズドライ。私は自分の鞄に入っているキズドライを隠して、椅子に足を投げ出して、染みる染みると駄々をこねながら足に包帯を巻いてもらう。するとご飯の炊きあがりを知らせる電子音。ビール腹で空腹とも満腹ともつかぬ胃袋だけど、嬉しいな、と言って、ふりかけでご飯を食べる。ちょっと無理して食べる。だけど、本当に嬉しいな。
ベッドに入ったあと、身につけているのが包帯だけというのはひどくエロティック。足をかばいながらのセックスは、なぜか罠にかかった子鹿を連想させて、目を閉じて息を深く吸い込むと、深い、深い森の香り。
間違いなく、彼と私はほぼセックスで繋がっている。そこで分かち合えるものは、理屈を超える。
一昔前、もうちょっと私が若かった頃、セックスの後は必ず空しくなった。だから私は無駄にセックスしないことを誓った。だけど、それは若さ故の潔癖だったかもしれないし、粋がっていただけかもしれない。
今は、もう少し楽になれる方法を知っている。愛する方法も、素直になる方法も、欺く方法も知っている。
だけど、その瞬間はちょっとだけ懺悔のよう。閻魔様がみていたら、私は地獄行きだろうか。
だけど、真っ正面からぶつかって、天国に行くくらいならそんな陳腐な天国ならば、「高級ホテルのスイートに泊まるのが好きなの」と細かなサービスチェックシートにレ点を付けるバカ女と地獄に堕ちる方がいい。
一生、足をけがしたままで、歩けない子鹿ならば。
それならば罪も犯さず、せめて誰も傷つけないで、地獄にいけるのに。