箱根

Chartreuse2006-04-16

ちょっと箱根に行ってきました。


目的はプラレール箱根登山鉄道を手に入れること。


朝8時、ロマンスカーの展望車両にのって出発。前日取材の合間を縫って手に入れたヴィロンのレトロドールを半分に切って、ブルサンとビアソーセージ、チェダーチーズとももハムを挟んで作ったサンドウィッチを持って乗り込む。私はどうしても朝シャンパンがしたかったので、モエのハーフボトルを買っていたのだけど、「恥ずかしいよ」というまっとうな感覚をもつ恋人42歳に却下されてふてくされるけど、心配していたお天気も今日はもつみたいだし、なにより旅行だ旅行。楽しみだー♪
電車は恋人宅に居候する前、私の青春の舞台であった駅を通過して一路箱根へ。みなさん、ご存じでしたか?展望車の運転手席はとっても狭いのですよ。ふつうの席の上にちょこんと運転席が乗っかってるので、とても閉塞感があるだろうね。お疲れ様です運転手さん。何はともあれ、鉄道大好き中年の恋人は、しゃれこうべって響きだけだとおしゃれな上着っぽくない?とかいう私の問いを無視し、車窓を真剣にみている。だけど、小田原から箱根湯本に向かう間に列車がぐへえーって悲鳴をあげてる!という私の報告には、空気バネの音だよ、と親切に答えてくれる。どうやら電車関連のことを問えば無視をされないらしい。
そんなこんなで箱根湯本着。すぐに箱根登山鉄道に乗り換える。
さあ!人生初のスイッチバックです。

なぜか私はスイッチバックとは、電車が急勾配を登るため、チョロQ みたいにいったん後ろに下がって、加速して一気に坂を登り切ることだと思っていた。たぶん幼い頃、no smokingとはここで相撲をしてはいけませんということだ、と私を騙し説いた悪しき姉に吹き込まれた誤解の類のひとつだと思う。初めてジグザグと前後を変えて登っていくことだと知り、感動。
山々に目を転じると、所々に桜の木がそこだけ薄桃色に染めており、それは美しい。

続いて、強羅でケーブルカーに乗り換える。ちょっと待って!プラレールは?といちいちうるさい私に辟易した恋人は無言で売店へ。ついに念願のプラレール箱根登山鉄道ゲット!
早雲山からロープウェーに乗りかえ大涌谷へ。



ここは約3000年前に噴火したその後も、未だに水蒸気だの炭酸ガスだの硫黄だののガスを吹き出しているところ。山肌のところどころからもくもくと煙が立ち上り、それを見に行く人でいっぱいです。で、こういうところでは必ずゆでたまごが売られており、みんなたまごをもりもり食べている。このたまご、ひとつ食べると7年寿命が延びるらしいけど、6個セットで売っており、2人で買えば一人3個食べなくてはならないことを考えると、寿命が延びるよりはむしろコレステロールの過剰摂取により健康を害しそうだからやめる。
その後ロープウェーで芦ノ湖へ。ここからは、なぜか海賊船に乗って箱根町まで行く。

海賊船の名前は「バーサ」。ほかに「ビクトリア」と「ロワイヤル」の全3隻で運行するらしい。
「バーサ」の乗組員は、半分以上が外国人観光客で、特に中国からのお客さんが多い。箱根は実に国際的な観光地なのです。
箱根町でちょっと遊んだあと今日の宿泊地、宮ノ下へ。泊まるは創業明治11年。私よりちょうど100年年上のクラシックホテル、「富士屋ホテル」です。

さすが、遠目でもすぐにわかる趣のある建物。社殿造りの風格ある建物はたぶん「花御殿」ね。チェックインからお部屋まで案内してくれた女性の方もとっても親切で感じがよくて、この居心地の良さはいったいなんでございましょうか。お部屋はフォレスト館のツインルームで、広々としたお部屋。お庭と山の眺めも良くて、大満足です。
夕食までの間、庭を散策したり資料室をみたりして過ごす。驚いたのは、1946年当時のメニューが展示されていたのだけど、それにタピオカとかローストターキーとか、当時そんな食材を仕入れるのが大変だっただろうにと思うようなメニューが並んでいること。このホテルがいかに先進的であり、食に対して熱心だったかがわかる。それで部屋に帰ってちょっといちゃついて夕ご飯です。
なんといっても今回の一番の目的は、富士屋ホテルのメインダイニングでのお食事(あ、いや。プラレールが第一目的でした)。まずはキールで乾杯。本日のメニューは、
真鯛カルパッチョ 帆立貝添え柚子の香り 
コーンクリームスープ
鰆のポワレ ニース風 菜の花添え
ローストビーフ ヨークシャープディング添え
イチゴのムース 苺飾り
です。
最初から最後まで赤ワインと通そうと思い、ワインを相談したところ、SANTA BARBARA WINERYのピノノワールを勧められたのでそれをいただく。おお!おいしい。お料理もとてもおいしくて、幸せ。またサービスしてくれたお嬢さんがとても親切で感じの良い方で、私はこのホテルの採用担当者と女性の好みが似ているのだと思う。デザートは800円追加でフランベにしてもらう。目の前で、フライパンの上で苺をカラメリゼしてそこにブランデーを注いで炎を散らせるという派手なパフォーマンスのデザート。今日は苺のクレープとアイスクリーム添え。これもおいしゅうございました。

部屋にかえってタモリジャポニカとかいう番組を見て大笑いして、ちょっといちゃついてすぐに寝る。翌朝揺り起こされてちょっといちゃついて、朝ごはん。
今日は雨だけど、山に霧が降りてきて、木の枝にはまるで水晶の実がついたように水滴がちりばめられていて、とても美しい。朝ごはんの後ちょっといちゃついて、チェックアウト。なんとチェックアウトのときに昨日の夜飲んだワインのラベルをきれいにラミネート加工してくれて渡してくれた。しかも裏面には昨晩サービスしてくれたお嬢さんの手書きのメッセージつき。本当にうれしかったよ。

その後、ホテルのラウンジでお茶をする。雨は小降りになったけどまだ降っている。庭の池には鯉。水面に雨粒が落ちるとき、鯉はなにを感じるのだろうか?大雨の夜は睡眠を阻害されたりするのかしら。私が鯉ならば、雨が降ればわざと水面に浮かび、背中の軽い刺激を楽しむだろう。
そんな感じで昼過ぎにホテルをでる。箱根湯本に行き、「天山」という日帰り温泉に行く。ホテルの人に勧めてもらった温泉施設。数種類の露天風呂があり、雰囲気、設備ともとってもいいです。もちろんそのぶん人気があって、かなり人は多かった。で、露天風呂でくつろいでいたら、いきなりお母さんと一緒に湯船に浸かっていた4歳くらいの女の子に胸を触られた。お母さんは、こら、ママやおばあちゃんのおっぱいなら触ってもいいけど、知らない人のおっぱいは触らないのっと叱っていたけれど、誰のおっぱいでも気軽には触らないように教えた方がいいんじゃないか。全くの他人に、素の胸を触られるのは久しぶりなので軽くショックを受けて露天風呂を後にする。後に恋人にそのことを訴えたのだけど笑うばかりでその教育方針に対する批判はないようだった。

そんなこんなで箱根の休日。ビールと薩摩揚げを買って再びロマンスカーに乗り込む。少し、おびえている。新宿が近づくにつれ、かつて何回も行き来した、あの駅を通過することを。電車はやがて成城学園前を通り過ぎる。目を閉じると、聞こえる。一睡もできず明かした夜明けの塗れたアスファルトを自転車が走りすぎる音。6月の夜の公園に落ちる梅の実の音。深夜の安アパートの階段を乱暴に上がってくる足音。
だから、本当に楽しかった、ありがとね、隣に座る人の胸に顔を埋める。耳を押し当てた人の体は、心臓の音や血の巡る音や、おなかがきゅるきゅると鳴る音や、実に様々な音がする。こっちの音の方がいい。
なんてかつては強かったのだろう、と思う。
だけど、そういう強さはもう、卒業だろう。
その生身の音を聞きながら、左前方には曇り空の下に新宿の高層ビル群が見えてきて、さらに自宅の方の空は、雨が上がったのか、雲が晴れて夕暮れの、淡いオレンジが包み込んでいました。