夢のかけら

恋においてもモノにおいても熱しやすく冷めやすいというのが私の最たる特徴(変な日本語)。今はキッチングッズがほしくてしょうがない。迫り来る27歳の誕生日、ル・クルーゼやバーミックスやヘンケルスのカトラリーや七厘やサラダドライヤーをリクエストしまくるしゃるです。こんにちは。


今まで人と長時間一緒にいたことがないものだから、自分の不機嫌というものにそう気が付いていませんでした。基本的に私は気分にそうムラのない人間だと思っていたのだけど、ムラがあっても一人だから気が付かなかっただけ。相手がいるとムラに気が付いて、あまりの自分の不機嫌に思わず吹き出しちゃう。
不愉快の理由は追及していたらキリがなくて、だから、少女の邪魔の入らない、深夜にこっそり広いバスルームにたっぷりお湯を張って、バスオイルを垂らしたお風呂に買ったばかりのバスラジオを持ち込んでウッディ・アレンみたいなジャズなんか流せば、女性誌の穴埋めページみたいにありきたりなストレス解消法だけどそれなりに気分転換できる。それでベッドに滑り込んで仲直り。やれやれ。そのうちセックスは飽きるだろうし、これがなくなったらどうやって仲直りをしたらいいのかしらね。次に時計を見たら1時間半もたっていて、やれやれ。この2週間で本3冊分くらいの時間がこっちに流出したような気がする。

深夜、寝息をたてるその人の横から抜け出して、ワインボトルを抱えて異様に巨大なテレビの前のソファに寝ころんで、無数のチャンネルをぱちぱちと変えてみる。画面にヨーロッパを旅する、東京情緒食堂の表紙の人が映る。ふいにヴェニスの2日間を想い出す。息苦しくなって思わず体を起こす。そして今日の私の不機嫌の理由がわかる。
小さな夢のかけらをばらまいては、網を手渡して急いで掬ってとねだる私に、あの人は、軽く「そのうちね」と言った。
だって、「わたしたちには時間は充分あるんだから」。

だけど、そのとたん、私の希望のすべてがうちひしがれた気がした。私には、充分な時間なんて想像できない。いつだって、今しか愛せない。今までの恋人に、そう教わったの。明日も、約束も、誓いも、そんなの存在しないの。
だから、
早く。今。出来る限り。最大に。一つ残らず。

早死にしそうね、私。だけど、約束した。私は、あなたよりも1分でも、1秒でもいいから、長く生きてあげる。健康な、あなたはきっと長生きね。私、大丈夫かしら?約束守れるかしら?
だから、早く救ってよ。夢のかけらが粉々になっちゃう前に。