物語

わーいわーい。
「馬の骨」の「馬の骨」を買ったら渋谷HMVで行われる馬の骨ミニライブの整理券がもらえた!うれしいなー。
お休みの日の朝食、ピエール・マルコリーニのココアを作って飲もうと他愛ない約束をしていたら、じゃあココアに卵黄をいれよう、と言うので、私は、えー気持ち悪い、私はストレートでいいやと言ったけど、ランチタイムに日替三色丼600円を食べてたら、ふとその濃厚なココアのレシピのことを思いだした。コレットの「シェリ」の中で、高級娼婦のレアが美青年シェリとの破局を迎えた夜に自分を慰めるために飲んだココアじゃなかったっけかな。ボールいっぱいのココアとパンと葡萄。そっか、実はものすごく甘美で切ない飲み物だったのね。気持ち悪いなんていってごめんなさい。だけど願わくば、そんなココアの力は借りないで済む方がいいね。


もしもその人が物語の主人公ならば、私はその人の前から消えるべきだろう。その人の奥さんのように癌に冒されてこの世界を立ち去るとか、新しい恋に燃え上がって逃げてしまうとか、或いはある日忽然と、その人の家に持ち込んだ、スニーカーもトリートメントもコーヒーメーカーも、残したまま消えてしまうとか。そんな残酷な物語をぼんやりと考えながら、お腹が空いたと駄々をこねるその人の6歳の娘にオムライスを食べさせるためデパートの7階のファミリーレストランに向かうその人と別れて本屋に向かう途中、ばったりと占い師の友人に会った。
久しぶり!元気!?最近どうしてたの?偶然の再会にはしゃぐ私の興奮をよそに、彼女は言う。
「何か、しっかりとしたものに固く守られてるのね」

私は、驚いたけど、すぐに納得して、確信をもって、頷く。あの人は寝言ですら私を守ってくれる。
これは私の物語。私は消える必要はない。そう、消える必要はない。



馬の骨

馬の骨