ドンファン

Chartreuse2005-06-13


ドンファン」を観た。 1502人の女と寝た男、ドンファンが、心から愛した女性を失って飛び降り自殺を図り病院に送られて、そこで精神科医に自分の愛の遍歴を話すというストーリー。若かりし頃、観たことがある。あのときはなんてばかばかしい映画だと思ったが、今はなんて素晴らしい映画だと思う。ドンファンが本当に無類の女好きならば、幸福だわ。
本当は女よりも大切なものがあるドンファンに、恋をしてしまったらどうしたらいいの。


もしその美少年が、とびっきりの美人とか若い女の子とか(とはいえ彼は23歳)とデートをするならば、理解できる。そんなスペシャルなデート帰りに私のところに来て胸に顔を埋めるのなら、私は「おかえりなさい」と言うことができる。だけど、相手は美人とは限らない。彼は見かけで人は選ばない。それは、内面を重視しているか、誰でもいいかのどちらかで、どちらであっても私は辛い。私は特別でありたいの。特別でなくてはやってられないの。例えば彼のガールフレンドの中で一番美人じゃなくても一番安心できる、とか、自分のことを一番理解してくれるから大切だ、とか。前者なら結構嬉しいしわかりやすい立ち位置でラクなのだけど、残念ながら彼はお世辞にも美人と言えない女の子ともデートをする。愛嬌はあると思うけど美人じゃない。私とキャラかぶるじゃん。だったら私じゃなくても良さそうじゃん。そして後者は、絶対に無理。理解できないもの、彼のことは。どんなにがんばっても、その全ては謎。受け入れることはできるけど、分からない。
どこにもいけない、私。愛してるといえば、「ありがとう」と言われるだろう。
じゃあ他の女の子と逢わないで、と言ったら?
まず、驚くだろう。なんで?と尋ねられるかもしれない。そして、私の元を去るだろう。
なんで?
嫌だからよ。
1502人とは言わなくても、一体何人の女の子と付き合った?それは訊きたくもない。
私は、普通の女で、あの人と付き合えるほど度量の広い女じゃない。
いずれにせよ、終わりしかないこの恋で、あーあ、いっつもこんなんばっかり。昔の日記を読み返せば、次は私を愛してくれる人と付き合いたいと、いつも言っていたのにな。


今日は、とにかく渋谷をざくざくと歩いて、いきなり左耳にピアスをもう一個開けて、アコースティックギターを手に入れた。どこに向かっているんだ私は。
こんなに孤独を感じるのは数年ぶりで、どうしたらいいんだろう?とりあえず、生まれて初めてギターを鳴らしてみる。
音がでる。
単体の音は、非常に頼りなくて、何も伝えない。
哀しいメロディーも、リズムもない。
載せる言葉もない。
それでもその、ラ、らしき音から、今までの人生の、ラにまつわる記憶が降ってくる。
どうか、この音符たちが、早く、繋がって、いろいろなメッセージを載せて、できれば、彼に伝わって。いつか。

ドンファン [DVD]

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