いつも誰かの誕生日

Chartreuse2007-10-12

さて、伊豆箱根の旅4日目です。
初日の湯ヶ島温泉の後は、古くから栄えた温泉郷、伊東へ。
堂々たる門をくぐり、玉砂利の敷き詰められた手入れの行き届いた樹木の前庭を歩いてたどり着いた温泉旅館は、巨大な7階建て。赤い絨毯に巨大な掛け軸。う、なんだこの下品な宿は・・・。中庭には一年中入れる温泉プールがあり、白いデッキチェアーとヤシの木が、なにかもの悲しい。通されたお部屋は最上階の露天風呂付客室で、入り口と居間、続きの間、応接セットの部屋、と無意味にばかでかい。応接室の向こうには、屋上庭園みたいなものがあり、そこに露天風呂がおもむろに置かれている。赤いたらいのような風呂釜に、じょぼじょぼと注がれるお湯。街中にあるため、周囲は他の温泉旅館やビルの景色。とくに、「ハトヤ」の赤い看板が眩しすぎる。これは・・・これは、盛り上がらないわ。
まあこういうのが好きな人ももちろんいるだろう。ちなみに、温泉の泉質はすばらしく、源泉はとにかく豊富なので、内風呂でも温泉が楽しめる。夕食のお料理もなかなか美味しくて、悪い宿じゃない。おじいちゃんおばあちゃんを連れて行くとか、小さなお子様のいる家庭にはいいと思います。



深夜2時。熟睡中の私の携帯が震える。名前をみて、うれしいうんざり。「もしもし」、低く出ると、「よお」と相変わらず不機嫌な声。「何してるんだよ」「彼氏とセックス」「ばか電話にでるなよ」「いやもう終盤だから」「そうか、お誕生日おめでとうおばさん」「ありがとう」「じゃあな」「うん、ばいばい」。1年ぶりの16秒の電話。お誕生日のお祝い。何はともあれ、毎年一番におめでとうと言ってくれるのは、いつだって彼だ。


翌日は伊東をたって、最後の目的地、箱根へ。
せっかくのプジョーの旅なので、ドライブを楽しまなきゃ。日本屈指のワインディングロード、伊豆スカイラインから芦ノ湖スカイラインへ。もうすばらしく楽しいドライブです。カーブを曲がるときの道路との一体感、エンジンの音。プジョーブルーのボディは秋の空気の中で一際美しく輝く。2台目として、ぜひお勧めの車です。オープンカーにしても二人で2泊3日分くらいの荷物は楽楽トランクに入るし。
そんなこんなで、最後の宿泊地、ハイアットリージェンシー箱根リゾート&スパに到着。ずっと前から泊まってみたかったホテルです。
お部屋はデラックスツインでなんと74平米。ばかみたいに広いけど、それは昨日の宿のように無駄に広いのではなくて、開放感のある広さ。部屋の設備は申し分なく、ここは一日部屋でだらだらしたい気分です。ホテルながらここはあくまでも温泉なので、メインダイニングのフレンチレストランにも浴衣で行っていい。浴衣でフレンチなんて初めての経験で少し楽しいです。そして夕方16時からはラウンジでシャンパン、ビールなどが飲み放題。普段は寡黙な恋人も、めずらしくシャンパンを飲みながら饒舌になり、だんだんと暮れていく秋の夕暮れ、いつの間にか二人の間に置かれたキャンドルの灯りがかろうじてお互いを照らしていて、ものすごく優しい気持ちになる。私は自分が浮気をしようと思っていたことなどすっかり忘れ、今の幸福に浸る。
その後食べたフレンチのコースは、特に美味しくもまずくもなかったけど、またそれが妙に楽しくて、こうして積み上げられていくひとつひとつの想い出は、どんな素敵な言葉よりも強烈な行動よりも、ずっと大切なものだと、29歳の私は知っている。
知っているのになあ・・・。