天使にはできないこと

Chartreuse2005-12-05

最初の恋人は、体で愛する人
次の恋人は、誰も愛さない人。
次の恋人は、保身のために愛する人
次の恋人は、誰をも愛する人だった。


今の恋人は、私の全てを、愛してくれる。けど。


私はときどき、それが不安になる。とっかかりがなくて、それが私であったのは、全くの偶然であったような気がする。

おそらく、彼は絶対に浮気はしないけど、それはそれが私だからではなく、彼はどんな女でも、彼女がいたら浮気はしない人だろう。今、こんなにも私のことを大切にしてくれる彼だけど、もし仮に奥さんが生きていたら、彼は私に心動かされもしなかっただろう。それは、とてもまっとうなことだけど、私は規則を破って愛されたい。季節の流れに身を任せるような、愛はとても穏やかで心地良いけれど、真夏に降る銀の雪を、夢見てるのよ。
そう。いつだって、ないものねだり。



ちょっと小樽に行ってきました。
土曜日、朝8時の飛行機だったので、5時45分に家を出る予定だった。相変わらず恋人は、起きる予定の時刻の30分前、つまり4時半に目を覚ます。すごいなー。目覚ましを起こす人みたい。
夜明けの道を駅までチャリで向かう。夜半、雨が降ったらしく、陽の昇る前の蒼い坂に敷き詰められた金色の銀杏は車輪の下で小さな悲鳴を上げる。冷えきった空気のなか、空には三日月、枝を飛び移るカラス。異様に明るい自動販売機の光を目印にチャリを漕ぐ。この道の夜明け前は初めてで、住み始めて2カ月が立つけれど、まだまだ知らないことがたくさん。
羽田発、千歳行きは満席。こないだ名古屋から東京行きの新幹線を見ていても思ったのだけど、本当に毎日大勢の人が移動してるんだね。私の廻りにはどちらかというと出不精が多くて、年に一回旅行にいけば良い方って感じの人が多いのに、世の中の人はたくさん移動してる。すごいなあー。

飛行機はクラスJってやつで、普通より1000円高いんだけど、ちょっと広いシートで、しかも今ならキャンペーン期間中でお茶菓子としてフィナンシェがもらえる!ま、どうでもいいんですけど。
千歳からは札幌を無視して電車で小樽へ。札幌は晴れだったのに、いつの間にか空は曇り、雪が舞いはじめた・・・と思ったら、辺り一面真っ白に。すごいー。日本海側と太平洋側ではこんなに違うんだね。小樽も無視してそのまま余市へ。ここは私の強い希望により訪問という運びになったのですが、ここは日本で最初にモルト・ウィスキーを作った、竹鶴政孝が理想を求めて辿り着いた土地。ニッカのモルトウィスキー工場があります。
工場は余市の駅を降りてすぐのところにあり、今は一面雪に覆われているけれど、春になれば、それはそれは美しい緑と水に溢れる土地なんだろう。

工場は人もまばらで(そりゃこの大雪の中、よほど酔狂な人じゃなきゃこないかもね)。観光客のために整備されたサントリーの白州や山崎と違って、ここはとてもひっそりとしている(いや時期的なものもあるかも)。本当に工場をちょっとのぞかせてもらってるって感じがよいです。

で、工場の中のレストランで腹ごしらえ。
鮭の親子丼。

その後、余市シングルカスク10年を手に入れ、真っ白のさらさらの雪の中をきゃあきゃあと遊んで、すぐにやることもなくなって小樽のホテルへ。
宿泊は運河沿いにある「ホテルノルド」のカップルプラン、「らぶ・ラブ・Love」。単に一番安いプランというだけだったのだけど、「カップルを徹底的に応援しちゃう」プランらしく、どう応援してくれるかというと、ダブルルームが利用できるということと、アイスクリームの引換券をくれるということです。ともあれ、このダブルルーム、たいそういやらしくて、バス・トイレ別の作りなのですが、なんとバスルームとベッドルームはガラス窓で仕切られていて、ブラインドを空けるとバスルームが丸見え。ラブホみたいなんだけど、ラブホほどバスタブが広くないので二人で入るのはちょっと窮屈。で、別々に入るのだけど、家庭のお風呂のようにバスタブと洗い場があるお風呂なんで、普通に髪とか洗って、バスタブに浸かって、あーとかいう姿をのぞかれるわけです。ラブホのようにジャグジーがあったり、浴槽がブルーのライトで神秘的に光ったりして非日常な空間を演出してくれるわけではなく、ごく日常的な行為が相手の目にさらされる。だから、あんまりラブホとかではしゃがない穏やかなカップルがちょっとした旅情を味わうには向いてるかもしれない。ま、逆に私は、過度な演出のない、このごく個人的な日常的な行為が恋人の目にさらされ、また私も垣間見ることができるということにほんのりと興奮を覚えましたけど。
ちょっといちゃついたあと、小樽市内散策へ。小樽は雪で、道路はぴかぴかに凍っている。運河沿いの温度計はマイナス2.7度といっていて、これは、近年体験したことのないさぶさです。でも運河沿いはさすがにきれい。ロマンティックだねー。



ちょっと歩いたらすぐに寒くなって、小樽倉庫No.1という地ビールレストランで地ビールを飲む。まだ5時前なのだけど、良い感じで酔う。その後、食べ物やを求めて雪の中ひたすら彷徨ったあと、やっぱり運河沿いに戻ってきて炙り焼きの店で、サッポロクラシックアンド魚介の炙り焼き。普通に美味しかった。すっかり満たされて眠くなって時計を見るけどまだ8時。だって今日は朝4時半から活動してたからねー。すべて2時間前倒しって感じ。
ホテルに帰っていちゃついてるうちに眠っちゃって、気が付いたら朝6時。9時半頃から意識がないから、すごいよく寝た。朝ご飯を食べてようやく目が覚めたから仕切直しで寝具で遊技。せっかくの旅なんだし、携帯ではめ撮りとか楽しんでみるが、なんだかね。私はなにをこんなに一生懸命はしゃいでるんでしょう?こういうのは、実際にやってみると頭の芯は非常に冷静になってしまって、SMにしてもそうなんだけど私はやっぱりノーマルなプレイが一番燃える訳で、プレイ最中は、ブーツの踵を修理に出さなくちゃとか思っちゃう。まあなにがノーマルかというのも微妙だけど、好奇心旺盛だから一応いろいろやってみるけどやっぱりスタンダードを愛するA型なんだわ私、と思った。

で、小樽散策二日目。今日は北一硝子周辺を歩いてみます。今日は快晴。雪に日差しが反射して、ほとんど何も見えない。スキー焼けってこういうことをいうのかな(スキー行ったことナイ)。切り子とかランプシェードとか冷やかしたあと、北一ホールというかつては保存倉庫として利用されていた場所にある喫茶店サッポロクラシック。167個の石油ランプだけが照らしだし、とても幻想的。
その後、せっかく小樽にきたんだからと、政寿司という寿司屋で特上ちらしとにぎり。さすがに美味しいよ。


さて、することもなくなったので、駅に荷物を預けて市内バスにて天狗山へ。小樽の町のちょっとはずれのスキー場で、展望台からの町の眺めが素晴らしいらしい(ほんとは昨日夜景を見に来るはずだったのだけど、寒さに挫折)。バスの終点で降りて、ほぼ貸切状態のリフトにのって5分弱。中腹のレストハウスには喫茶店と、スキーに関する展示と、天狗資料館になってます。今までの人生で一番沢山の天狗を見た。

それで、レストハウスからの眺めなんですが、こんな感じ。天狗山の影が街におちて、それがすっぽり街を被うまで、みておりましたとさ。

飛行機は8時半発で小樽市内に帰ってきてもまだ時間があったので、長崎屋という地域密着型の百貨店で靴下を買ったり、紀伊国屋(なんと小樽には紀伊国屋があるのです)で本を立ち読みしたりして時間をつぶす。

空港でおみやげを買ったりして、夕ご飯に空港のレストランで恐ろしくまずい石狩定食を食べたりして、帰途につく。相変わらず私は飛行機に乗った途端、深い眠りへ。いつだって、飛行機のシートは私のもっとも安心できる場所。向かう場所はひとつ。私には選択肢はなく、迷うことも、寝過ごすこともない。気が付けば羽田についていて、恋人に起こされる(フィナンシエをもらいそこねた!)。そういえば、私は今まで恋人と、旅行に出れば別れたなあ。旅行に行ったことが付き合っていた人の正式な彼女にばれて別れざるを得なくなったとか、別れることにしたから最後の思い出に旅行に行った、とか。
それで今回は、どうなんだろう?
どちらでも、かまわない、と思う。
仕方がない、と思う。

私たちが、別れるとしたら、それはすごく、哀しい決断だろうと思う。
それを思うだけで、10筋ぐらい簡単に涙を流すことができる。

この人は、知っているだろうか?
日に日に、その人の子供のいる、マンションに帰ることが、私にとって苦痛になっていっていることを。

それは、ひどく辛い問題で、私にはどうしようもない。
彼にも、どうしようもない。

誰も悪くないんだ、と、言い聞かせてみる。
本当は、私が悪いのかもしれない。
受け入れるべきものを、受け入れられないのは、3人のうち、私だけなんだもの。

だけど、私は湖に張った氷の亀裂を、眺めている。もう少し、体重をかければ粉々に砕け散り、冷たい水の中に引きずり込まれそう。
ああ。うまく、溶けると良いなあ。春になって徐々に氷が溶けていって、水辺には花が咲いたりするといいなあ。
そういう可能性もあるんじゃないかと、本当に、次の春が来るのを、楽しみに、ちょっと不安に、待っていたりするのです。