ナポリ

Chartreuse2005-08-23

ナポリは雑然とした街。ここに比べればローマが瀟洒な街に思う。
ナポリでもヌーブラは売れ筋で、でもヌーブラが必要そうな人もそういないように見える。何カップだよって女性が多い。
タバッキで日本への切手を購入したら絶対に金額の違う切手を無理矢理押しつけられ(Airmail用のが欲しいのに、日本へのAirmail用のはないと言い張りやがるの。船便で充分だよシニョリータ、と。fuck)ケンカをしたあと、屋台で絞りたてのオレンジジュースを買って、そのへんに腰掛けて休む。

暑いなー。何もやる気が起こらないので、とりあえず恋人に電話して、夕方までごろごろする。夜になったら近所のピッツェリアで食事。マルゲリータとビール。このマルゲリータが死ぬほどうまい。東京でもいくつかナポリ風ピザを出す店はあるが、比べものにならん。ふかふかで香ばしい生地。ジューシーなトマトソースだけど、ソースが染みた生地もいやらしくない。ああ、美味しいね。4ユーロ也。パスタは恋人の作ってくれるカルボナーラの方が美味しいけれど、ピザは本場の方が断然美味しい。ま。いくらキッチングッズの充実した家とはいえ、窯はないからな。

翌日はカプリ島へ。カプリ島はまあ高級リゾート地で、ちょっとしたバカンスって感じ。着いてすぐに蒼の洞窟行きの船乗り場へ。小型のモーターボートで入り口まで行って、そこで手こぎのボートに乗り換える。波の様子を見計らって、引いたところで一気に洞窟の中へin!
わーお!入り口そふり返ると、見たこともないような蒼。漆黒の水は光を帯びたところだけ深く青く輝く。水深は20メートルくらいあるらしい。光があたって輝くというよりは、なにか海底に美しい生き物がいて、それが輝いているみたい。唯一の不満は船頭の歌うカンツォーネがうるさかったこと。
帰りは島を反対回りにぐるりと一周。崖っぷちに山羊。こんなむき出しの岩の断崖絶壁にいる山羊は、生まれたときから片時も心休まる日がないんじゃないか。例えば草原で草を噛んだり、小川のせせらぎで恋人と戯れたり。だけど、青い海がある。潮風と明るい太陽があって、どっちの山羊の人生でも、まあそれなりに楽しいんだろう。山羊は飛行機に乗って、別の山羊の人生をみにいく訳じゃない。

港に戻ってカフェテリアで海の幸のスパゲッティーリモンチェッロ。美味しいわ。ケーブルカーでカプリ中心街まで行き、相変わらず恋人に電話をして、ああ、私こんな子じゃなかったのにね。ドライな付き合いがウリだったのにね。リモンチェッロ屋で小さなリモンチェッロ用の陶器のグラスを二つ買う。
やれやれ。私、なにやってるんだろうね。こんな楽しい所にひとりきり。
でもそんなの分かり切っていたことで、私は、やっぱり旅が好きだわ。誰か、愛する人がいても絶対に一人で旅にでてしまうだろう。毎日、毎日電話をしたり手紙を書いでも。それは説明不可能な感情で、ただもう、一人でふらふらと、動き回るのが好きだということ。毎日手紙に「愛してる」と綴り続けると、本当に愛しているのか分からなくなる。もう何もかも、遠くの世界の出来事で、今の私にはこの世界こそが全て。私には愛している人がいるという概念になる。
二度と、元いた場所には帰りたくない。
旅にでるといつもそう思う。私はこのまま一生旅を続けていられると思う。帰る場所なんてなくていい。私は、誰か「愛している人」に、愛していると、永遠に手紙を送り続けるだけの女なのかもしれない。

そうなの?私。
相変わらず、そうなの?
落ち着いて。
あの人は私の帰りを待っているのよ。私が必要なの。
帰るのよ。帰るの。