過渡期

Chartreuse2005-08-07

霧雨が静かに世界を濡らす夕暮れの街を、光がときどき彩るフロントガラスの水滴越しにながら、「私の夢はね」と切り出す私に身構えたその人が、「フォグランプを点灯すること」という告白に吹き出して、ひとしきり笑った後に、今も付いてるんだよと教えてくれたときに、おそらく私のちょっとした願いは、この人がいつも叶えてくれるのだろうと思った。


昨日は久々に料理をした。
チキンのなんとか谷風(どこの谷か忘れた)。フランスのりんごの産地なので、カルヴァドス(りんごのブランデー)とシードルを使ったレシピはこの谷の名前が付くことが多いとか。
マッシュルームと鶏肉とタマネギを炒めてカルヴァドスとシードルと生クリームで煮こんだもの。簡単だけどとっても美味しい!
あと大量のニース風サラダ(サラダをちょっとつくるのって難しいね)、アボカドのバルサミコソース添え。飲み物は当然シードルです。
美味しかった。やっぱり料理をするって心にもゆとりが生まれるし、いいね。

41歳の恋人と、6歳の女の子と、囲むそのテーブルは、とても不自然なようで自然で、だけどみんながみんな葛藤があるのだろう。最も心苦しいのはその少女が小さな胸で、どれほどの困惑を抱えているのだろうかということ。だけど心優しいその子は私をお風呂に入ろうと誘ってくれる。
深夜その人は、少女を寝付かせた後、こっちの方がむしろ心配だ、と私の頭を引き寄せる。

初めて、きちんとした名前で私のことを呼ぶ人。
いつだって全力で、私を守ると言ってくれる人。
私は、大切なものがいきなり二つできてしまって、どうしたらいいかわからない。
電車で三人並んで座って、真ん中の子供が、私の子供だったら、と思って、ばかみたい、と思って泣きそうになる。

いつも、どこかに到達するのを待っている。

早く辿り着きたくて、全力で駆け抜けようとする。

落ち着いて。ここもゴールよ。いつだって、ここが、大切なの。