ちまき

ファーストキスさえすぐには思い出せないようなすさんだ26歳の女のもとに、実家の母からちまきがとどく。

ちょっと泣きたくなります。
ちまき、好き。これは全国的な食べ物なのかな?実家では初夏の非常にメジャーな食べ物でした(朝ごはんにでると、遅刻するんだよ。笹をほどかなくちゃいけないから)。笹の香りがだんごにうつるの。すごく香りがいいの。子供のころ、6月(実家は一月遅いのです。例えば七夕は8月7日にやるのよ)のちまきの笹巻きと、秋の干し柿のための柿の皮むきが好きだった。その後、私に「ある程度の物心がつくと、クリスマスプディングだとか、ベリーのプリザーブだとか私オリジナルの風習が生まれていった。
こんな夜は、実家の深夜の台所。秤や鈍く輝く金属のキッチングッズやオーブンの前で、静寂に耳がいたくなるような午前3時の世界で、完璧な孤独と幸せに浸る、幼い私が今の私をまるで、別人のように、東京で浅い呼吸で細い脈で生きながらえる私を、ふくらむパンを覗き込むような面持ちで見つめる幼い私がいるような気がして、私は、あの頃の、痛みも怒りも哀しみも絶望も、概念として知っているだけで、だからこそ淡泊に、しかも本質を知っていた、あの頃の私に、相談したいことがいっぱいで、今すぐ、会いに来て。あの頃の私。