ペンギン

Chartreuse2005-06-09

その美少年が、まるでパスタをフォークでくるくると巻くかのように、パスタとピザとランチビールでご機嫌の私の髪の毛を指に巻き付けて長い髪が好きだと言ったから、徹夜で終わらせた原稿を入稿したあとの爽快感をいっそう満喫するために予定していた午後の美容院の時間がぽっかりと空いた。代わりにドラッグストアに行って、度重なるカラーとパーマで疲れ果てた毛先をいたわるための整髪剤を購入する。もしも彼にエゴイストをきて欲しいと言われれば、私は 109に行ってしまうような、尽くすタイプの女です(今、モトカレ達からの不平の声が聞こえた)。
徹夜明けの入稿。「午前中までに」という約束だったので、11時58分にデータを送った。一仕事終わり。何をしていたんだか、同じく徹夜明けの美少年がお祝いをしてくれるといってやってきた。いつものピザ屋でピザとパスタをシェア。今朝ヤフーニュースで見た、ペンギンの同性愛化の話を教えてあげると、代わりにバロックを理解するためにパスカルが重要だと教えてくれた。ベルニーニもボロミーニの建築も、パスカルを理解しなければ、と。いきなり師になったその人と私の間にペンギンが通り過ぎていく。ペンギン。ペンギン。いつもペンギンに小馬鹿にされている気がするわ。
当然ランチをごちそうになりにきたのだろうと思ったのだけど、お祝いだからとおごってくれた。こんなことで涙がでそうになるほど、お姉さんは嬉しいよ。

その後別れて新宿に向かう。午後の新宿。本屋とタワレコに行って、 ageteをチェックして、さすがに眠い。体が痛い。それでも帰る気になれなくて、どうしてだろう。何か一つの仕事が終わった後は真っ直ぐ家に帰れない。ふらふらとバーに入って、オルヴァルを飲む。トラピストビールの最高峰。苦みと芳醇な香り。喉を流れて胃に落ちる。アルコールはすぐに肌の表面にきて、ぴりぴりと、弱い電流が流れる。目を閉じると、熱い。疲れた目とか、脳とか、体とか。今まで、いつだって、こういうときは一人でいた。そして、一緒にいる誰かのことを思って切なくなったけど、あまりにもそんなパターンは多くて、もはや一人以外のこの時間を想像できない。今だって、今、この瞬間にこの疲れた頭を、おでこを肩につけて安堵する自分を夢見るけれど、たぶん一人で安堵することに慣れっこの私はたぶん、その人と別れた後にまた、どこかの町で小さなバーに入るんじゃないかな。
外にでてもまだ暗くなくて、もう一軒どこかに行こうか、帰ろうか迷う。そして今日がサッカーの予選だということを思い出して早く帰らなくちゃと思うけど、さらに私はサッカーに全く興味がないことを思い出して、なんだ?私は。一人で笑って、好きなものが、心に戻ってくるように、早く、この疲労の固まりをどこかにおろさなきゃ。