「愛してる」禁止令

Chartreuse2005-11-15

ちょっと琵琶湖まで行ってきました。

名古屋までのぞみで行って、そこで親友に車で拾ってもらって、ドライブアンド近江牛というのが今回の目的だったのですが、名古屋方面に向かう前日というのは、私はいつも飲み過ぎてしまう。おそらくのろいかなにかがかかってるんだろう。友人と恵比寿のカジュアルフレンチで食事をしていて、調子に乗って恋人を呼び出して、連れて帰ってもらえると思うと安心してついつい飲み過ぎて、真っ白のダナキャランのセーターに赤ワインをぶちまけた、までは覚えてるのだけど、気が付いたら朝5時45分。マンションのベッドの上で、恋人に「しゃる、自分がしなきゃいけないことわかってる?」と恋人に起こされる。慌てて準備して、乾燥室を見ると私の白いセーターはきれいに洗濯されて干されている。用意をしてる間に、データの吹っ飛んだiPodのトランスミッターのソフトウェアをインストールしてくれて、袋にいれて、はい、と渡してくれる。ああ、一体何の不満があるというのだろう?

さて。生まれて初めての滋賀県。名古屋から高速に乗って、まずは比叡山延暦寺を目指します。
思ったよりも観光色は強くなくて(清水寺みたいなの想像してた)、落ち着いた感じがいいね。
甚だしく無計画に行ったので、いきなり高速道路のような高額の有料道路になってちょっとむっとするけどしょうがない。色づいた紅葉を眺めながら、快適なドライブです。奥比叡の方から入ってしまったので、まずは根本中堂。お堂まで下る道には、迫力あるイラストの描かれた看板が並んでいて概略を知ることが出来るのだけど、あまりに数が多いため、途中で飽きてしまう。だけど、凛とした空気を感じたし(さぶかった)、たくさんのお坊さんをみることが出来て良かった(頭の形って本当に多種多様なんだね)。次は大講堂なのだけど、この辺で飢えきった我々は、ちょっとはしょって次の阿弥陀堂にむかう。ようやくみつけた蕎麦屋で、比叡山そばというちょっとしょっからい山菜そばを食べ、再び拝観。さらに体を暖めようと、50円出して鐘なんかもついちゃう。
文殊楼というえらく高い石段を登ったところにある木製の建築物を見て、役所に勤める友人は「ここの火の元責任者にはなりたくない」とぽつり。職業病だなあ。私は、この地域のガイドブックってやたら説教臭くてやな感じになっちゃうな、とか思ってたよ。
で、これは、狛牛?

琵琶湖は、私の生まれ育ったうらにっぽんの町を彷彿とさせます。湖の町だからねー。なんとなくほっとする光景。湖の幅とかも似ていて、なんだか実家に帰ったみたいだ。



その後、近江八幡へ行く。「近江八幡で唯一現存する旅籠」が今回の宿なんですが(セレクト友人)、唯一の現存と言う言葉が示すとおり、古い。特に水回りが最高に古くて、林間学校風情です。しかも土曜日の夜だというのに貸切状態。でもまあ、湖の町らしく、宿の女将さんが鯉に似ていて満足です。

夜は近江牛のすき焼き。これが自慢の宿らしく、それはそれは驚く量が出てきます。

贅沢だねー。だけど、目の前で豪快に鍋に放り込まれる割り下と砂糖を見ながら、ちょっと不安。私、薄味が好きなんですよ。あとは適当にやりますよーとご退席ねがう。で、ちょっと水を足したりして味を薄める。近江牛はさすがに美味しいけど、あまりの味の濃さにだんだん頭が痛くなってしまった。沢山肉を食べたので、体が全体的に獣臭い。

あ、あとね、鯉の煮付けというのを初めて食べた。尾っぽのところが美味しいらしく、7時間も煮こんで下さったのだけど、異様に味が濃くて、これ一口でビール1本かご飯8ハイくらいいけそう。


で、やることもないので10時半くらいに寝て、朝は8時まで寝てしまう。朝、起こしに来る親子がいないからさあ。

で、朝ご飯は、無味の玉子焼きと、子がたっぷりの鮎の塩焼きと、赤こんにゃく。この赤こんにゃくというのがすごいやつで、見た目レバ刺しです。食べてみてもまた微妙で、目をつぶればなんとかいけないこともないとおもうのだけど、そこまですることもないと思う。
私、今までそんなに嫌いな食べ物ってなかったのだけど、すごいぞ滋賀。滋賀の味覚は私を許容しない。

で、ミラクルな宿を後にして、近江八幡を観光・・・と思ったのだけど、あまりにとらえどころがない町で、これは暮らすように旅する旅の上級者ならともかく、経験も少ないし、時間の限られた我々には無理だね、とさっさと彦根に移動する。

彦根はそこそこ楽しい。彦根城があるし、夢京橋ロードとかいう、観光用のストリートもある。その夢京橋ロードで、生まれて初めて、鮒寿司に挑戦!

惨敗!!
いやー。すごいですね。鮒寿司。人間の食べ物だとは思えない。一口で、これはだめだ、と思った。
て、感じで今回は全体的に負けた感じ。こういう負け旅ってのもいいもんですね。

口直しに近江牛のハヤシライス。

味は普通なんだけど、どうして、ミックスベジタブルを散らすのだろう?この色彩感覚が理解できない、という私に連れは、まず、ミックスベジタブルだけ食べちゃえば?と提案するけど、それはいやだ。

と、いう感じの、琵琶湖の旅。目的は友人に会うためで、場所はどこでも良かったんですが、久しぶりに湖をみて、家を離れてのんびりできてよかった。なんてなんだか主婦みたーい。

新幹線に乗っちゃえば、まじですぐに東京に帰ってきちゃう。夕方の東京行きは5分に一本でていて、地下鉄みたいだ。

すぐに自宅近くの駅について、家までの道のりをとぼとぼと歩く。
足取りが重くなる。
私は何なのだろう?



ある父子と同居する、女。
週末になれば逃げ出す、女。


郵便受けにはまだ私の名前はなく、住民票はまだ移せずにいる。
ああ、一体、何をしてるんだろう?



名古屋駅でおみやげに買った手羽先を片手に家に帰ると、親子が玄関に出迎えてくれる。二日間のうちにあったことを子供は興奮気味に話す。私の逃げ出した二日間の間の。その深い、深い溝は自分が作ったもの。
その隔たりを、心地よく思ったり、絶望したりする。
おそらく毎週、週末におびえる私だけど、それでも慕ってくれるの?
いきなり、子供のことを愛おしく感じたりする。



夜、ベッドに入って恋人に言う。
「お願いがあるの。寝室に鍵をつけて」


「鍵?」


その提案は、その人の理解を超えている。
また、涙が溢れる。
「実際に、寝室に鍵をかけるかかけないかは、問題じゃない。私の精神的なよりどころなの」


冷たい女と、思ったかしら?
それは子供を排除したい一心だと、思ったかしら?


涙は、後から後から溢れる。


恋人は、その涙を拭いながら言う。


「わかったよ」


何が、わかったのだろう?

何もかも、わかったのかしら?
それとも、何一つ、わかってないのかしら?


必死に言葉を、探す。
今での恋のように、言葉の駆け引きなんかじゃない。
シビアだけど、優しさに溢れた言葉。
だけど、なんてハードなの。


おそらくは、一人で解決をしなければならない出来事なんだろう。
受け入れるのも、
覚悟を決めるのも、私。


彼らは、もしかしたら選択肢をもたないのかもしれない。


でも、だからと言って、私にすべて委ねるの?

あなた自身は、何一つ、私を傷つけはしない。
いつでも優しくて、全力で私を愛してくれるけど。でも。


助けて。


乗り越えるために、力を貸して。

どうしようもない現実を、乗り越えてきたあなたはひどく理性的で現実的。
でも、私は分かり切っていた事実を、受け入れていくのですら必死なの。

現実に、絆を持たない冷ややかな私たちには、
些細な日常を取りあげて、ひとつひとつ、解明していく努力が必要なの。
確かな、決まりが。
どうか。
教えて。
答えて。

黙って、抱きしめて、そんな瞳で見つめても、私には、わからない。

相変わらず最後は「愛してる」という言葉に落ち着く。
すべてはそこからはじまるけども、
そこに落ち着いたら全てが曖昧になるの。

「愛してる」という言葉は禁止ね、と言いかけてでもやっぱり、
それは真実なんだと、
それだけが真実なんじゃないかと、
思って相変わらず、そんなもろいものを頼りに私は法的な契約を交わすことを前提に転がり込んでしまったのか。