秘密

かつての恋人たちはみな、ヘビースモーカーでおそらく今後も私の恋人となる人の喫煙率は高い気がする。私は煙草を吸うときの、その気持ちよさそうな顔が好き。その煙が充満する肺に耳を押し当て、肺胞が、紫黒に冒されていく様子をうっとりと思う。

だけど生まれて初めて、恋人に煙草を減らすよう口を出した。
「だってキスが苦いんだもの」。


勝手に「愛し」て、勝手に「死んで」いく、かつての恋人たちとは正反対に、私の頭を抱き寄せて「3日に二箱」と苦笑して約束してくれる恋人が好き。

「いくらでも、好きなだけ煙草を吸って冒されていってもいいのよ」。
そんな本心はどうでもいい。
「あなたの体が心配」だから。
だって私たちは「お互いが必要」だから。



ときどき、膝の内側に、痣とはいかないまでも、うっすらと赤紫の、圧迫されたような痕があり、ずっと不思議だった。
なにかしら?いつこんな傷、つけちゃったのかしら?
先日、その正体が判明した。
騎上位のときにできた痣。
それに気がついたとき、思わず吹き出して、どんなアクロバティックなことをしたかしらとその人とランチタイムに向かい合って鰻を食べながら思い返したりして思わず顔を赤らめて、スカートの裾ぎりぎりのところにあるその痣を、その人が気づくかしらと思ったりする。
もちろん、これは私だけの秘密。
これを読んでる男の子。こっそりガールフレンドの膝の内側を、チェックしてみる?